大田区 税理士の体験談
日本の教育制度は下から上にいくほど(すなわち小学校、中学校、高校、大学、大学院の順)質が下がるが、アメリカはその逆というのが私の判断である。
どうすればよいだろうか。
第一に、選抜を学力試験だけに頼る方法を改めて、いろいろな基準から選抜する方法を導入する。
第二に、転学とか転学部を容易にして、自分にふさわしい大学や学部を入学後も選べるような制度がほしい。
第三に、入学基準をゆるめて多くの学生を入学させるが、卒業を厳しくすることによって、在学中に達成したことを重視するシステムに変える。
入学はやさしいが卒業はむずかしいという制度の方が、学生の勉学意欲を高めるし、本人の資質向上にも役立つのである。
卒業後多くの人は企業や役所で勤務する。
ここでこれの関心範囲に限定して、社会組織内における改革案を述べてふよう。
まず第一に、企業や役所における賃金、昇進決定において、学歴(水準と大学名の双方)を無視する人事政策に転換してほしい。
学歴を採用時に考慮することはそれなりの合理性があるので排除しないが、採用後は学歴を消すだけの勇気がほしい。
既にみたように労働者の働きぶりによって処遇を決めることに労働者側にそれほどの反感はないし、企業にとっても便益が大きい。
能力業績主義の強化は、どこの大学を卒業したかということが意味を失い、おのずと学歴主義の打破につながる。
第二に、能力・業績主義がうまく機能するための最大の鍵は、人の働きぶりを公平かつ厳格に査定するシステムの確立である。
多くの人が納得のいかない査定結果によって差がつけられていると判断すれば、それはむしろ弊害の大きい結果を生むこと必至だからである。
第三に、年功序列制度の見直しは既に述べた。
これには三つの意味がある。
まず労働者のインセンティブという観点から重要である。
次に、分配の不平等という観点からすると、年功序列制度は若年に低い賃金、中高年に高い賃金を意味している。
若年に生活苦を強いる面がある。
特に都市部でそれが目立つ。
もう少し若年の賃金を上げ、中高年の賃金を下げるという政策(すなわち年齢による賃金上昇率を下方修正する)が、年齢による所得分配不平等解消に役立つ。
そして、労働者の働きぶりや貢献度に合致した賃金支払い制度にすることである。
この制度改革は賃金分配を不平等化に向かわせるが、効率化のためにはやむをえないと考える。
第四に、わが国には規制の残っている産業がまだある。
例えば金融業や公益企業である。
規制産業の賃金は当然高くなる。
規制緩和によって企業間の競争を活発にする必要がある。
公正、な競争の末に、業績の良い企業と良くない企業の間に賃金差が現れることはかまわないが、規力の制の強い産業と規制のない産業の間の賃金差には合理性がないからである。
第五に、賃金の企業規模間格差が拡大していると述べたが、これに対する政策はそう容易ではない。
複雑な問題を多く含んでいるからである。
国際競争を考えれば大企業の生産性を下げることは認められない。
かといって中小企業への補助金支払いもやや時代遅れの感がある。
べンチャー企業も含めて、中小企業が自己の製品やサービスの生産と販売に、たとえ少ない数であっても優れたものが出せるような制度整備と企業努力が期待される。
零第六に、男女間の賃金格差の縮小と、採用や昇進における女性差別を撤廃する必要がある。
男女雇用機会均等法等によって法制化は試みられたが、功を奏していない。
違反企業の処罰も、所得や資産の問題ではなく、職業、教育、結婚といった社会学的な問題を考えた。
親子間の職業移動、学歴の効果、結婚の役割、等から判断すると、わが国は閉鎖性・固定性が高まっているといえる。
個人が所得を得る手段は、主として労働による賃金である。
企業における労使関係や労働者を育てる教育制度に関して、望ましい改革を述べてみた。
結果として賃金分配はやや不平等化するかもしれないが、効率化のためにはやむをえないと判断される。
個人の総所得は賃金所得に、資産所得と移転所得が加わる。
総所得と資産分配の不平等化をやむをえないが、国民の意識改革が最も重要と考えられる。
以上のような改革の末に起きる結果を、賃金分配への影響に限定して予想してみよう。
それぞれに平等化ないし不平等化を助長する方向にある。
総じていえば個人間の賃金格差はやや拡大の方向にいくのではないかと予想される。
賃金所得の不平等化は、労働者の勤労意欲と企業の生産性の向上のためには、むしろ避けられないことなので、理にかなった改革といえる。
阻止するために、税制と社会保障制度の果たす役割が議論され、具体的な政策提言もなされた。
不平等化がなぜ望ましくないかを、思想や哲学の側面から主張してふた。
特にRの「公正原理」の意義を強調して、マクシミン主義に忠実であるなら、平等化が望ましい目標となりうる。
しかし、「貢献(ないし効率)」「必要」「努力」の三要素を考慮することも肝要で、これら三要素を最適に組み合わせると、平等を最終目標におきながらも現実の政策が具体的に提言できるのである。
わが国の所得分配は不平等に向かっていることがわかった。
国際比較の上からも、わが国の平等神話がもう存在しないことが示された。
資産分配もバブル期を中心に極端な不平等化に向かったが、その後それはやや軟化して現在にいたっている。
所得分配不平等化の要因は、様々な理由が複雑にからんだものである。
賃金分配の緩やかな不平等化、わが国社会の高齢化、単身家計の増加、家計内の稼得者の微増、一部の資産保有者による金利所得の増加、帰属家賃の貢献、等である。
賃金分配については詳しく論じた。
特に性別、学歴別、年齢別、企業規模別の賃金分配を検討した。
所得分配の不平等化をもたらす諸要因として、合理的な要因あるいは公正な要因と判断されるものに関していえば、不平等化を非難できない。
逆に容認し難いものもある。
資産分配の不平等化には主として二つの要因があった。
第一に、バブル期に地価(特に都心部)や株価が急騰したこと。
第二に、土地は多くの人が保有者であったが、そうでない人も相当いる。
株はほんの一部の資産家によってのみ保有されていた。
持つ者と持たざる者の差が資産分配において特筆すべきことは、土地を中心にした資産が、親子間の遺産相続として世代間移転されていることである。
遺産を相続できる人とそうでない人の格差は相当大きく、そのことが資産分配不平等の発生源として大きな原因になっている。
子供の努力によらない初期条件の差となって現れているともいえる。
政策の視点から平等・不平等の問題を考えてみると、戦争直後の諸改革の意義は重要である。
戦前の日本は旧社会であり、不平等性が相当高かったが、戦後の改革によってかなり望ましい効果がみられた。
高度成長の進行によって平等化はますます進んだといってよい。
しかしわが国は戦後を通じて一度も福祉国家でなかったことは強調されてよい。
福祉国家でない日本が、相当高い平等性を達成したことは、奇跡といってもよいかもしれない。
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